金融政策がデフレと円高の是正に有効である‐‐‐浜田宏一氏
---「金融政策だけではデフレも円高も阻めない」・・・・これが経済学200年の歴史に背を向ける「日銀流理論」だ。---
浜田浜田宏一氏の、「アメリカは日本経済の復活を知っている」、のまえがきの一節です。 逆に言うと、浜田氏は金融政策がデフレと円高の是正に有効である事を強い信念を持って考えています。
ここでは、リフレ派の第一人者である浜田氏の考えを追ってみましょう。
浜田氏は、金融緩和でお金余りの状態にかかわらず人々がお金を借りたがらない事こそが、デフレの弊害であると指摘します。
・デフレの世の中は、貨幣の価値が上がっていくという事。金利がゼロというが、実は借りたお金に対して返さなければならないお金の価値は上がってしまっている。デフレ下では金利ゼロでも、経済学で言うところの「実質利子率」が発生している。返却する額の方が大きな負担となる事は、お金を借りたいという気持ちのブレーキになるはずだ。 ・お金がジャブジャブ、金利がゼロでも借り手がつかないというのは正確ではない。お金を借りるには担保が必要だ。デフレ下では不動産、証券などの担保資産の価値が下がってしまうので、担保が提供できなくなり借入ができなくなる。
一見もっともな話です。デフレだから、お金を借りないのだと。 お金を借りる人がいないからデフレになるのだ、という話と、デフレだからお金を借りないのだ、という話。 卵が先か鶏が先か・・・に等しい議論にも思えます。
しかし、この堂々めぐりを打開する「きっかけ」に関して浜田氏は言及します。
---「デフレを脱却するには、予想も重要な要素です」という事だった。金融緩和はさまざまな経路で効くが、最も早く効くのは予想を通じてである。「予想、期待形成に注意して下さい」と小泉首相には伝えた。(P.87引用)---
人々の景気に対する心理的な作用、良くいえばその心理的な作用の効果を利用して、悪く言えば騙してでも「今後景気が良くなる」と人々に信じこませる事によって、実際に景気が良くなるという事だと思います。
浜田氏は、過去の日銀が、心理的にデフレに導いてしまった事をしきりに本文中で述べます。 浜田氏は、金融政策だけではデフレ脱却には不十分だと思っています。「金融政策+心理的効果」これをセットにする事が重要、と考えていると思います。(本文で明確にそう言っている訳では有りませんが、私にはそのように感じ取れました。)
心理的に働きかけるパフォーマンス、それが「異次元金融緩和」「インフレターゲット」、また「アベノミクス」という言葉なのだと思います。
同じ事の繰り返しかも知れませんが、金融緩和がデフレ脱却に有効であるというより、デフレ脱却の為に金融緩和と心理作戦を利用する、ということですね。
結局、人々が何を信じるかにかかっているなと思いました。 今後、日本の景気が実際に上向いていけば相乗効果でどんどん良くなるでしょう。 逆に、なんらかの理由によって人々が金融緩和の効果に懐疑的になってしまうと、ますます景気回復が困難になるような気がします。
私は日本人ですから、もちろん景気回復を信じる側に回り、日本経済の復活に貢献して行きたいと思います。
ところで、リフレ派、反リフレ派の両方の考えを見る中で気付いた事があります。
リフレ派の方は、心理的作用面の効果を強調する反面、国債残高が積みあがる危険性やそれを回避する方法など、今後想定しうる危機に対する回避方法などの言及が少ないと思います。
反リフレ派の方は、データに基づく詳細な分析により理論を打ちたてますが、心理的作用面の効果やその利用には無関心な傾向が有りそうです。
今後も、リフレ派・反リフレ派両方の考えを参考にして、じっくり考えて行きたいと思います。
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